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ロマンティックな羊たち
別冊マーガレット 1980年1月号に掲載。
掲示板での募集に、けろここさんからご提供いただきました。
けろここさんに大感謝。


 静かな田舎の住宅街。その町のど真ん中に、それはあった。
 羊、それに牛。向こう側の柵が見えるほど小さく狭い牧場。〜「瀬川牧場」〜。
 タウン誌の記者である前島都は、思いがけずその牧場に出くわして素直に感動する。だが同時に、そこが近隣の住民には迷惑がられている事を知る。
「瀬川牧場」の牧場主は瀬川哲という。彼は祖父の代からの牧場を大切に引き継いできた。家業としてもだが、なにより町の中の自然ということに愛着を持っていたのだ。
 だが、近辺の住民にとって、そこからの鳴き声や臭いは公害でしかなく、町会議からも「牧場をたたむように」との要請を受けていた。
 都は、哲の考えや人柄、それになによりも自分自身が感じた牧場の素晴らしさに、この問題を記事にしようと取材を始める。
 しかし、そんな都の耳に入ってくるのは悪い評判ばかり。
「くさい。」「きたない。」「羊や牛は気味が悪い。」「土地が勿体無い」「公園にした方が綺麗で良い」・・・・落ち込む都の救いは、子供たちの素直な「羊、すき!」の声だけだった。
 そんな中、哲自身も、苦しい経営状況や、周囲に愛されていないということに疲れてくる。
 出荷予定の原乳が、思わぬ事故でダメになってしまったのは、そんな矢先だった。収入の当ても断たれ、ついに哲は牧場を売ろうと決心する。だが都はそれに猛反対する。
 都はタウン誌に「町の牧場に愛の手を」という記事を載せ、町の人々に配りながら説得に回りだした。
〜〜本当の自然は、公園とは違うのです。美しさもみにくさも、汚さも綺麗さも全部ひっくるめて「自然」なのです。この場所を家で埋めるのですか。子供たちが羊や牛をどんな顔で見ているか知っていますか。はじめて牧場に出会ったとき、感動しませんでしたか。みんなに愛されなければ、この小さな牧場は生き続けられないのです。
 皆さんの手が必要です。みなさんで支えてあげてください。そして自慢にしてください。都会では殆ど無い牧場が、私たちの町にあるということを〜〜
 都たちの説得に、住民たちも心を開いてくる。落ち込んでいた哲も、都の元気さに、力を取り戻す。
 ある日二人は、牧場への理解を深めてもらおうと、牧場の一角を子供たちに開放する。ところが、子供たちは隅っこに固まったまま動こうとしない。そんなふうに遊んだ事が無いので、どうすればいいのか判らないのだ。それを見て大人たちは一瞬ぞっとする。そして、自分たちの子供時代はいつだってどこだって空き地があって、転げまわって遊んでいた事を思い出し、「瀬川牧場」を認めていこうと考えるのだった。

 そして都と哲は、周囲の暖かい変化に幸せを感じながら、羊の群れに隠れてそっとキスをするのだった。


けろここさん的考察

 さて、我が町に牧場があったら・・・と考えさせられてしまいました。動物の臭いがダメで、動物園もサーカスも大嫌いな私としては、反対派に回ってしまいそうです。

 しかし、人の親として、確かに最近の子は外で遊ばないなあと思います。空き地はあっても、柵がしてあって、他人の侵入を拒みまくってますしね。お話はハッピーエンドなのに、現実と照らし合わせて、なんだか切なくなってしまいました。



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