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お花畑通り
別冊マーガレット 1978年6月号に掲載。
掲示板での募集に、けろここさんからご提供いただきました。
けろここさんに大感謝。


 住宅街の一角にある、小さな花畑。入っていくと「「いらっしゃいませ」と優しい声が迎えてくれる。ここは、花畑ごとの花屋なのだ。
 父母亡き後に残された家屋敷で、兄「れん」と妹「りら」とで経営している。

 その花屋に、ある日「植田水生(うえだみずお)」という少年が訪れる。自作のアクセサリーを店に置いて欲しいと言うのだ。
 少年の熱心さに兄妹は承知し、店舗代わりの温室に置く事になる。また、住居も決まっていないという彼を住み込みにしてやる。
 だが、最初の晩になにやら不審な電話をかける水生・・・。「見事成功。お楽しみに、さ。」

 翌日から水生は花屋の様子を観察し始めるが、まるで「趣味」でやっているような人の良い経営に呆れてしまう。
「れん」は女性に甘く、すぐ値引いてしまうし、「りら」も子供が「ママにあげるから」と10円を握り締めてきたりすると「いい、ただで持っていきなさい」とやってしまう。
 そんな、この店は周辺の住民のオアシスでもあり、友人たちの協力もあって成り立ってはいるものの、当然経営は苦しかった。
 そんな折、大手の不動産会社から、マンション建設のために家屋敷の売却を求められ、店は実は岐路に立っているのだった。

 ある夜「れん」は水生の不審な電話を立ち聞きしてしまう。
「いやだよ。そんなのできないよ」と反発する水生。だが結局承知させられてしまった様子。だが「れん」は何も言わなかった。

 次の日から事故が起こり始める。
 水生がアクセサリーを落として、拾い集めるために店を開けられなかったり、温室の戸が一晩中あいていて花がダメになりそうになったり。
「れん」は水生の事を思い出したが、やはり何も言わなかった。
 当の水生は、「りら」が事故続きのことで泣いているのに心を痛め、自作のペンダントをあげて慰めようとしていた。

 そんなとき、一人の青年客が奇妙な依頼をしてくる。
「明るい色で、明日の昼一時から三時までの間に開花する花が欲しい」というのだ。

 実は、恋人が手術を受ける事になったので、手術直前に開花する花を見せて元気付けたいのだそうだ。
 難しい注文に悩む「れん」や友人たちだったが、「りら」が名案を出す。芥子を布で覆って開花を遅らせようと。そして、散る花を見せないために、恋人に内緒で毎日新しい芥子にとりかえようと。
 この案は大成功。毎日花を届ける役を引き受けた水生は、青年から心からの礼を述べられ、「花屋っていいんだな」と思う。

 そんなある日、水生は水撒きの水をうっかり止め忘れ、花畑を水浸しにしてしまう。店は排水で大騒ぎになる。
 この前のアクセサリーや温室の戸の件もあり、友人たちの疑惑が水生に向けられる。だが「りら」が泣いてかばい、その場は収まった。

 病院での芥子の一件を聞いて、近所の社長から注文が入る。
 外国からの客をもてなすために、一週間満開の桜を飾りたいと言うのだ。だがもう桜の時期は過ぎ、東北か北海道の山桜しかないはず・・・と「りら」たちは渋る。
 だが社長の「そのかわり今後は、公私共に花はそちらに任せるし、知人にも紹介しよう」と言う言葉で一大決意し引き受ける。
 これが成功すれば経営は安定する、家屋敷を手放さなくても良くなる、ビジネスなのだ、と。

 桜探しに「りら」と水生が行く事になり、水生は「りら」を宿に残し、自ら山に入り桜を探してくる。傷だらけになりながらも腕いっぱいに桜の枝を抱えた彼を見て、「りら」は「水生の方が花屋みたい。」と笑うのだった。
 苦労の甲斐あり、社長は「銀座の大手の花屋にも劣らない」と絶賛。「リラ」たちは花屋を続ける事の自信を得る。
 だがそんな中、大喜びのみんなからそっと離れ、電話をかけにいく水生があった。

 電話の相手は水生の叔父。屋敷の売却を迫っていた不動産会社の社長だった。
 水生の報告に怒る叔父。だが水生は「おじさんの負けだよ」と電話を切る。
 受話器を置き、集まってきたみんなに自分が叔父に雇われたスパイだったことを告白。いろいろ邪魔したのも自分だったと打ち明ける。
「でも、こんな花屋だなんて知らなかった。こんな素敵な・・・。」
 そうしてみんなに謝ると、出ていこうとする水生。その後姿に「りら」の声が響いた。
「だめよ! 出ていっちゃダメ! 『素敵』なとき、いつもいたじゃない。『素敵』にしたの、水生じゃない!」
 戸惑う水生に「れん」も言う。
「おかしいとは思っていたけど、君は芥子のときも桜のときも真剣で必死だったから、信じて賭けたんだ。」
 彼の言葉に友人たちも優しく頷く。
 そうして水生は「仲間」と認められたのだった・・・。


けろここさん的考察

 相手を思いやって頑張った事が、結果としてプロとして認められるというところが好きです。スパイになりきれない水生君も可愛いし。
 花畑ごと花屋って、ありそうでないですよね。土地が必要だし。でも、住宅街の一角にこんな花屋があったら、さぞ和むことだろうと思います。



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