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ひなぎくジャムとこでまりパイ
別冊マーガレット 1977年5月号に掲載。
掲示板での募集に、けろここさんからご応募いただきました。
けろここさんに大々感謝。
胸がキュンとなる幼い初恋物語です。
主人公は、繊細な感じの少年「桂」。それに、わんぱく少年「史郎」と可愛い少女「ちや」の三人が主要人物。
さて、いつものように仲間を引き連れた史郎。途中、「ちや」を誘いますが、「ちや」は「桂」を待ってから行く、と答えます。史郎は少し面白くありません。
そこへ遅れて「桂」と、その母がやってきます。実は「桂」は明日引っ越してしまうのですが、そのことをまだ皆に言い出せずにいます。
ふたりを見つけた「ちや」は「桂ちゃんのおかあちゃま!」と嬉しそうに駆け寄ります。
幼い頃に母を亡くした「ちや」は友達の母をとても慕い、自分の母のことのように話すのが癖になっています。「桂ちゃんのおかあちゃまは、こでまりの花が好きなのよね。史郎ちゃんのおかあちゃまは、芯がピンクのひなぎくが好きなんですって。」
そんな「ちや」を、「桂」は可哀想だな、と感じています。
史郎たちも交えたおままごとで、「ちや」は花で見事な御馳走を作ります。今日のメニューはひなぎくジャム入りのこでまりパイ。木苺を絞った紅いお茶には、つめくさのお砂糖を入れます。
〜〜いつも、だれより素敵にごちそうをこさえた。野バラのクッキー。ミモザのキャンディー。すみれのサラダ。すずらんは卵、ちいさいの。・・・たんぽぽ、つくし、れんげそう・・・〜〜
「桂」はそういう思いで「ちや」を見つめています。けれどふと明日のことを思い出して気持ちが沈みます。・・・なんで引越しなんか、あるのかな・・・と。
夕方になり、それぞれのお迎えがやってきます。「桂」の母もやってきます。ひとり残る「ちや」を心配して「お父様、今日も仕事で遅いの? 一緒に帰る?」とたずねますが、「ちや」は首を振ります。
「もう少し、ここにいる」
いつまで待っても誰も来ないのに・・・来るはずの無いお迎えを待ちたい気持ちが、「桂」の心に響きますが、どうしてやることもできません。結局、引越しのことも言えないまま、「桂」は母に連れられて帰ります。
誰もいなくなった野原で、「ちや」はひとりでままごとを始めます。「ちや、たんとおあがり」「はい、おかあちゃま」・・・一人二役で母を演じる「ちや」。ままごとをホントにしたくて、「ちや」は泣きながら花のパイを本当に食べ始めます。
さてその晩です。「桂」の家に「ちや」の父から電話が入ります。「遅くなるので電話をしたのだが、誰も出ないのです」と。
きっとまだ野原で「誰か」を待っているのに違いない・・・・「桂」は走り出ます。
「ちや」は野原で倒れていました。お腹が痛いと訴えます。ふと見ると、花のお菓子がすべて無くなっています。「これ、食べたの? ねえ、ちや、たべたの?」その問いにうなずく「ちや」。
「いま、誰か呼んでくるからね」と「桂」は一番近い史郎の家に助けを求めに走ります。
幸い大事無く、医者の処置でらくになった「ちや」は、「桂」の手を握りながら眠ってしまいます。自分の手を握って安心している「ちや」を見つめる「桂」。
けれど、翌朝、哀しい別れがやってきました。
「いや、桂ちゃん。ちや、いいこにするから。わがまま言わないから。もう、お花のお菓子なんか食べたりしないから・・・・・・いっちゃいやあ・・・!」泣きじゃくる「ちや」。「桂」はその頬にそっと小さなキスをします。そして、「きっとまた、すぐ、くるよ」と言い残して去っていくのでした。
けろここさん的考察
とにかく可愛い話です。「おかあちゃま」と上品に話す子供たちが印象に残っています。現実にいないよ、こんな子、と突っ込みも入れたくなりますが。お花のお菓子が美味しそうでしたね。わたしでも、ほんとに食べちゃうかも。