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夜天光
エレガンスEVE(秋田書店)1999.8-9月号に掲載。
どうも前号の予告によると「初登場」だそうで。 でもそれから全くこの雑誌には出てないんですが…期待しているんだけど…
前後編100ページ。
この時もつい立ち読みだけして逃してしまい…にやんこさんに感謝。
家族物語 vol.4(サクラ愛の物語増刊)(あおば出版)2002.6.21に前後編とも再録されました。
2004年5月『あめりか橋 燃ゆ』(あおばコミックス)に収録されました。


 建築士志望の和泉佐保は母と二人暮らし。  SOHOで仕事をしている母・斎子は彼女に対して、「入学金は貸し・大学の奨学金を最大限受けられる成績で入ること・学費の不足と小遣いはバイト・家事は半々・4年で卒業、即実務経験して2年後一級の資格取って借金返す」と娘に言い渡し、実行させている女性だった。職歴もすごく、親戚とは縁切り状態であるらしい。
 そんな佐保を捜している男が居る、ということで彼女は不思議に思う。
 一方、バイトしている建築事務所では、彼女は職場における日常的なセクハラ(言葉とか)に戸惑い、苛立ち、そして奮起する。
 その昔、母親と二人歩いていた時、からかわれたことが彼女にはあった。しかしその時母親は、彼女の手をほどき、男を見据えると一人で歩いていった。母親は一人で歩き通した彼女の手を、通りを抜けたところで手を差し出した。そしてその時佐保は知った。「こういうときに泣いてはならない」
 そんなある日、自分を捜している者に佐保は出くわす。逃げる様に立ち去る男を追おうとした時、彼女は一人の男にぶつかりそうになる。鬼頭弓比古と名乗る彼に、初対面だというのに佐保は親近感を持つ。後で気がついてみると、弓比古は母と似ていたのだ。
 その話をしている所に、時永至という男が訪ねてくる。佐保の婚約者だ、と。
 母・斎子は伊勢の名家・高氏家の娘だった。その母からも、従順な妻としての心得を説かれて、二十歳で鬼頭の家に嫁いだ彼女は、最初の子供である息子を奪われる。乳母に養育させるのだ、と。
 夫は「従うのが妻のつとめ」とばかりと思うだけの男だった。そして三年後、佐保が生まれる。彼女は奪い去られた息子の分も愛情をかける。
 だが佐保が五歳になった時、夫は腹心の時永の息子と佐保を婚約させようと言い出す。
 それを聞いて斎子はこの家と縁を切る決心をする。娘には絶対自分と同じ道を歩ませてはならない、と。お嬢様で令夫人だった斎子は髪をぶっつり切り、幾度も住まいも職も変え、転々とする。追っ手には巡り会わず、そして離婚届もいつの間にか受理されていたことを彼女は後で知る。実家は従妹を鬼頭家の夫人として代えに差し出していた。
 新しい姓を得るために、一人暮らしの老人と形だけの養子縁組もする。和泉という姓はそこからついた。
 話を聞いて、弓比古が自分の兄であったことを佐保は知る。そして、母が自分をどういう気持ちで育ててきたか、も。自分が「逃げる」ことでしか断ち切れなかった「社会的性差(ジェンダー)」の鎖を佐保は闘って断ち切れるように、と。
 弓比古は留学先のアメリカから、佐保を「婚約者」から守るように戻ってきていたのだ。
 そして佐保は時永の会社になぐり込む。「約束など反故だ」と。


私的考察

 最終的にはスカっとするんだけど、ちょっと何かも少し語って欲しかったかな、という感じ…
 「夜天光」のタイトルにあたるエピソードが、何かいまいち「ストーリー」並べると、いまいち際だってこないせいもあるかも。
 お月見サークルの仲間も名前がある割には、話に直接関係してこないしね。
 それと「婚約者」時永があまりにも薄すぎる、というのもあるかなー。おにーさんに比べて。「きっと社会的には有望だと見られているけど、でもやな奴」として描写されてるんだろうな、時永は(笑)。
 ま、それはともかくとして、あの母親・斎子さんのくんだりはやっぱり圧巻です。あの「断ち切る時」の力強さがたまらん。
 …さてこのきょうだいは、その後どうなるのやら。



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