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「懐古恋愛倶楽部」シリーズ

レディースコミック「アイ」に掲載された作品。
SAKURAミステリー2001.1月号に1〜3話一挙掲載。
あおばコミックス(文庫版)に収録されました。
シリーズもの。おそらく、「陽の末裔」で大正時代を扱っていたことから、その流れで書かれたとは思われる。
当時のあおり文句としては「究極の大正モダニズム!! 血沸き肉踊る一大娯楽活劇!!」となっている。


黒と金
(1987.6)

 大正11年春。まだ大震災の起こる前の東京。
 横浜の田舎の方から、野々宮縹はT大に通うために、知己の竜王寺伯爵家に下宿するべく上京してきた。叔父の舶来屋烏梅三に、お得意先のこの屋敷を紹介されたのだ。
 おのぼりさんの彼にはいきなり刺激の多い東京。早々に「東京ローズ団」という少女不良団と遭遇してしまう。荷物を取られそうになった彼を助けたのは一人の少女。だが彼女は実は竜王寺伯爵の夫人・茜子だった。
 竜王寺伯爵邸には伯爵の蘇枋、その姉の由理子、そして夫人の茜子の三人が執事と使用人三人とともに暮らしていた。縹にとって、茜子は「かわいくて元気」な少女にしか見えない。(実際には「18歳の時なの 2年前」に結婚した二十歳で商家の出身)
 そう感想をもらす彼に、伯爵は「眼に見えることだけでわかったり信じてはいけない」と微笑む。その途端、縹にはこの屋敷がいきなり暗く広くなったように思われるのだった。
 伯爵は実際新しもの好きだった。次の朝には、舶来屋からは新型のガスのレンディを届けてもらってたりする。私室には「赤玉ポートワイン」のポスターが貼られ、アールヌーヴォー調のガラス食器や、何故か発売前の雑誌などもあったりする。
 やがてT大に通い始める縹。物理学の浅葱教授は、伯爵をかつて教えたこともある、と彼に近づいてくる。
 その物理学の教室に、ある日電気冷凍機がやってくる。まだ日本には二台しかない、という貴重なものだった。説明をしている時の教授の手が自分に対してアヤシイのに気付き、縹はびくつく。
 帰る途中彼は、「東京ローズ団」の頭らしい女・芹と伯爵が仲良さげに話してるのを目撃する。更にそれを伯爵に見つかってしまい、彼は伯爵に「内緒ですよ」と口止めする。それを聞いて縹は、茜子に同情してしまう。
 帰ると、こわもての男・檀宇万良が訪問していた。伯爵との会話から、何やらここにもアヤシイものを感じてげんなりする縹。上で茜子の相手をしていてくれ、と頼まれた彼は、先ほどまでの様々なことが頭によぎり、つい彼女を抱きしめてしまう。するとその首に白刃がっ。彼はこの行為(未遂)をネタに伯爵に脅迫されることとなってしまう。
 それはつまり、泥棒の片棒わかつぐことだったのだ!
 まず、浅葱教授のところへ質問に行く素振りで、部屋の鍵を借り、その型を取ることに。
 更に翌々日の夜、由理子が運転する車で(執事も乗っている…)、T大まで向かう彼等。冷蔵庫を運び出そうと発車した時、そこに人影が。やってきたのは「東京ローズ団」だった。陣頭に立つ芹は、頼まれて見逃すつもりだったけど、影の会長が陣頭指揮を取るから、と行く手を塞ぐ。
 「東京ローズ団」の影の会長―――それは茜子だった。
 そこに巡査が10人ほど駆けつけてくる。その先頭には檀宇万良―――彼は刑事だったのだ。
 伯爵は「証拠が無ければ逮捕はできない」と彼等を逃がして檀刑事と一騎打ちをする。
 帰ってのち、ことの次第を茜子に聞く縹。それは伯爵の「困った道楽」なのだという。新しいもの、高価で手に入れにくかったりするものを詐欺や泥棒で我が物にするのが楽しみなのだと。それにつられて由理子や執事までがそれを楽しむようになってしまったのだと。
 茜子はそれをそっと返したり買い取ったり、ローズ団を連れて邪魔したりしていたのだ。だから一応屋敷にあるものは盗品ではないのだ、という。檀刑事は「いつか完璧な形で」伯爵を逮捕するのが夢な、「いまやお友達」なのだという。
 ローズ団は嫁いだ時「足を洗った」のだという茜子。この屋敷の人間は皆、表と裏の顔を持っていたのだ。そして縹は自分も足を突っ込んでしまったことを自覚し、いつか伯爵から茜子を奪ってやる、と決意するのであった。 


花と嵐
(1987.9)

 大正11年夏。竜王寺伯爵邸ではいきなり英語の練習が始まった。英国の侯爵夫人が来るのだという。縹はそんな彼らを後目に夏休みだ、と実家に帰ろうとするが、伯爵に止められる。そして作戦会議―――ターゲットは、その来訪するヘリオトロープ侯爵夫人なのだ、という。
 一週間後やってきた侯爵夫人は、縹が予想していたのよりはずっと若くて美しい女性だった。
 歓談する伯爵と茜子と縹。茜子は夫人の化粧バッグに目を留める。だが夫人はその話題を長く続けず、自慢の薔薇の話を始めた。彼女は青い薔薇を手に入れたのだという。(もっともその青、は紫がかった薔薇のことを言うのだが)新しもの好きの伯爵は、その花「ブルー・ストーム」を分けて欲しいと願う。しかし夫人は断る。
 伯爵に言われ、夫人に庭を案内する縹。そしてその留守中に、夫人のバッグはまんまと無くなっていた。無論それは伯爵が隠したのだった。
 そして翌日の嵐の日、伯爵は侯爵夫人のもとにそれを返しにでかける。
 留守中、その話を聞いた壇刑事は屋敷に乗り込んでいく。家宅捜索の令状も持たずに強引に。その彼の前に立ちふさがる茜子。昔とったきねづか、啖呵を切る。さすがの剣幕に壇刑事も引き下がる。その姿を見た縹はまたもやいけない気を起こして茜子を抱き寄せるが…
 無論そういうところで伯爵は帰ってくるのである。今回は何も違法はしていない、と言って。
 実は夫人のバッグははじめから偽物だったのだ。ヘリオトロープ侯爵家の内情は火の車。宝石は模造品となっていき、時には夫人の魅力も売りに出される程だった。
 そして以前にバッグを手にとったことのある伯爵は、侯爵夫人ににっこり笑ってバッグを返し…結果的に、青バラの苗木を送らせることに成功したのである。
 鮮やかな手口につい「英国のばらが日本の風土に必ずしも合うとは限らない」と嫌みを言う。すると伯爵はこう言うのだ。「いいんですよ 別に 咲きたくなけりゃ/うちにはちゃんと赤いばらがいつも咲いてるんですからね」茜子のことである。
 縹はまたもや負けたのであった。


私的考察

 えー、この作品に関しては伊能さんに感謝です。はい。存在も知らなかったものですが、おかげで内容も判りました。
 活劇です。はい。
 それもかなりゴージャスな。つーか、シュミに走りまくった。
 ただこの話、「第一回」だけあって、「顔見せ」的部分が多く、ごちゃごちゃしている感は否めませんのだ。
 とはいえ、この話がどんどん続いたらはなり面白いシリーズなのだろう、と思うのだ。
 何せ「大正時代」で「怪盗もの」で恋愛あり、おそらくは「団」の抗争もありそうだし。
 キャラがそれに立ってるわ。皆表と裏の顔がある、というのも何ですが、伯爵は「美形で着流し」だし、由理子さまは「これぞお嬢様」的おっとりなくせに頭巾かぶって車運転しちゃうし、茜子さんは、といえば、表はきゃぴきゃぴの若奥さんなのに裏はべらんめえな「影の会長」だし。檀刑事の執着ぶりはややアヤシイものも感じかねない(笑)し(でも豪快)。芹さんは何か実に典型的「女ボス」という感じだしさー。
 ただ、長く続く話ではないと思うのよ。だってあえて時代を大正11年/震災前の明るい時代に設定しているあたり、震災で終わりそうなイメージはあるもの。
 まあこの話に関しては、いづれ国立国会図書館で「続きがあるのか」「どういう話なのか」をしっかり確かめに行こうと思いますのだ。はい。

 追記1.よく見たら、皆この話のキャラクターって色の名前だよな。



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