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懐古的洋食事情(1)昭和元年のライスカレー
集英社YOUコミックス
1990年2月28日発行


昭和元年のライスカレー(YOU1987.7)

 昭和元年。銀座を闊歩するモダンガールだった愛子さんが結婚したのは、新聞記者の竜平さん。
 周囲のおすすめで見合い、そのまま結婚というコースに至ってしまった愛子さんは、料理なと何にもできない人だった。
 ところが新居は最新式、ライト風のアパート。中の最新式の、文化的な台所に呆然として、実家や竜平の母親の所へ習いに行く。
 何とか形にはなってきたものの、実家で教わった懐石料理は「立派」、竜平の母に教わったお総菜は「これならおふくろの方が美味い」と言われてしまう。
 はじめは「誰でもよかった」はずの相手に本気になってしまっていることに気付いた愛子さんは、昔の友人で竜平の会社仲間にヒントをもらいに行く。そしてその帰りに、ナンパされそうになって、つい昔のくせで啖呵を切ってしまうところを竜平に見られる。
 そのままレストランへ食事に行く二人。そこでライスカレーを舞えに竜平が言ったのは、「実家の味でもおふくろの味でもなくきみとぼくの味が食べたい」たとえて言うならライスカレーのような。
 そこで愛子さんはライスカレーを作ろうと思うが、作り方がさっぱり判らない。二人は協力して作ることにした。


コロッケに明日はない(YOU1988.4)

 大正6年春。資産家の高島氏の末の妹、緑さんの縁談がふってわいた。
 ところが緑さんは、「良家の令嬢」にもかかわらず、その縁談の相手を見に行きたい、と言う。
 ところが、横浜の新興会社の経営者の一人である婚約者の生方は、仕事が忙しく、なかなか緑と話ができない。いきおい、彼女の相手をするのは共同経営者の白河ばかりとなってしまう。
 その白河の口から聞く「新しい家庭」の図にどうしたものかと考えてしまう、「何もしたことのない」緑さんは、とりあえず生方の「好きな食事」を聞きに行く。だが「好きな食事」ではなく「今日の食事」を聞かれたかと思った生方は「コロッケ」と答える。
 それから緑さんはせっせとクリームコロッケを毎日作って家族を練習台にする。さすがにそれに家族が辟易した頃、緑さんはそれを持って横浜へ出向く。だがそこで、コロッケはじゃがいものものであったことに気づき、再び挑戦…
 して、再び来訪しようと意気込んだ時、緑さんは過労で倒れてしまう。
 見舞いに来る生方と白河。そこで白河までもが緑に求婚する。だが二人が彼女に求めているものを聞き、緑は自然な自分とゆっくりと家庭を築きあげていきたい、という生方を受け入れる。


すっぷ かつれつ あいすくりん(YOU1988.11)

 昭和元年。モガの杉山百合子さんの見合いの相手は、伝統と格式を重んじる家の一人息子、南条さんだった。どう見ても断られると思っていた百合子さんは、結納にまで至ってしまってびっくりする。
 とはいえ、南条家の息子、直については、非常に好印象を持つ。問題は、家と母親だった。
 そんなある日、直に南条家に呼ばれる。そこには、一族の女性がずらりとそろっていた。そこで一応昼食の汁を作ってみる百合子さんだが、あまりにも酷評される自分自身に、思い切り啖呵を切って出て来てしまう。
 出てきた外では直が待っていた。レストランで食事をしながら、自分がこの伝統と格式ばかりの家に新しい風を入れてくれるかもしれない、という期待を持たれていたことを知り、また、その首謀者が「完璧な嫁」の顔をしていた母親だったことを知り驚く。そこへ百合子の忘れ物を届けに来た母親も合流。スープとアイスクリームを彼女に勧め、食事していたカツレツを一つお裾分けなどしつつ、三人で南条家を引っかき回すことに同意する。
 内々の申し込みに現れた母親は、日本髪から束髪にし、どうやら百合子さんを迎えたら、断髪洋装に踏み切ることにするということだった。


公爵さまのオムライス(YOU1989.9)

 大正11年、夏。
 深草子爵はよく伊布院公爵家を訪れ、友人の王顕氏と楽しい時間を過ごしていた。
 楽しい時間は、公爵だけではなく、その乳きょうだいで、メイドである華のおかげでもあった。明るく強気な彼女は、この屋敷の陰の支配者のようなものだった。
 その公爵に、宮家の令嬢との縁談が持ち上がっていた。だがなかなか話が進まない。華は華で、何となく気が進まない自分を感じていた。
 子爵もその仲立ちに訪問することにもなる。その時に「お互いの障害はお互いだ」と言い、いっそ華を自分の元に欲しい、とまで言い出す。動揺する公爵は心を決める。
 そしてある日、公爵は彼女にオムライスを作って欲しいと言い出す。それは公爵が、シェフの作る卵だけのオムレットより好きな食事だった。食事をする公爵を見ながらぽろぽろ涙を流す華に、公爵は自分への気持ちを問いかける。典雅な姫君と格調高い食事を三度三度する自分と、笑いながらオムライスをたいらげる自分と…華は迷わずオムライスと答える。
 そして公爵は、公爵位を弟に譲り、二人は明るく堂々と駆け落ちしていったのであった。


ヨコハマ・ベイカリー・ブルース(YOU1989.12)

 昭和2年、横浜。震災復興で大騒ぎの中、「ミナト・ベイカリー」のひとり娘のマリコは男を一人拾った。
 行き倒れの男の名は早峰六郎。東北の陸中から出稼ぎに来ていた青年だった。マリコは彼を店に連れていく。そしてその日から、その店で六郎は働くことになった。
 毎日を一生懸命働く六郎。ある日マリコと一緒に大桟橋のアメリカ船にパンを届けに行くが、その時に、今まで聞いたことの無い音楽を耳にする。それはジャズ。アメリカで生まれたまだ若い音楽だった。
 パン屋の職人としてもだんだん力をつけて行く一方、時々通うアメリカ船の船員から、六郎はトランペットを習い、どんどん上達していく。
 そんなある日、アメリカ船の帰還にともない、一緒に来ないか、と六郎は誘われる。一緒に音楽をやらないか、と…
 だが彼は船員達に「いつか行く、けど今じゃない」と言って断る。彼にはもっと大切なものがあったのだ。


私的考察

昭和元年のライスカレー
 記念すべき第一弾。これがあったから長いシリーズは続いたのだ。
 だけど確かにこれが基本形だわね。
 愛子さんというのは、「陽の末裔」2部に出てきた不良少女団の女王お愛。ちゃんと結婚式に卯乃が出てるのがご愛敬。どういう「お友達」で出席したんだろう…
 この話の場合、料理も何だが、「最新型同々会アパート」が気になります(笑)。同潤会アパートをもじったんだろうけどさ。

コロッケに明日はない
 高島氏の妹で、「陽の末裔」では時々名前が出てくる「横浜の緑叔母」さんの若い頃の話。確かに本編でもちょっと姉妹の仲でも異質だったが(笑)。
 コロッケねー。確かに毎日だったらちょっと(笑)。特にクリームコロッケは…イモコロッケの方が確かに「総菜」だわね。気取りけのない。
 しかしこの時点では森さんもおとーさんと確執もなさそうに見えるんですが。

すっぷ かつれつ あいすくりん
 脇役の杉山百合子さんが「主人公顔」になって出てる作品。なかなか痛快。
 どっちかというと直さんよりもおかーさんの方が印象的なのがちと笑えるとこ。彼はもう単に「いい男」でしかないような気がするんですが。

公爵さまのオムライス
 「陽の末裔」に出てくる伊布院公爵ではなく、そのおにーさんで、爵位を放棄してしまった人の話。つまりこの縁談も、そのまま弟に行ったという訳ですか…こういう家の結婚って…
 確か弟の方の公爵は、綺麗なものなら「どっちも好き」な、割と遊び人タイプですが、そーすると、やっぱりそれが結婚して上手くいってるということは、夫人はよっぽど超越した人…
 …は、おいといて。ま、自然でいられる関係が一番いいってことなんだろーね。のほほんとした旦那としっかりものの奥さんというのは、いい組み合わせだし。
 さてオムライスですが、ワタシは作れません。…綺麗に作るの、ってあれは難しくないですか?

ヨコハマ・ベイカリー・ブルース
 これ好きですわ。何が、と言われてもね…
 やっぱりこの人には珍しいけど、音楽というのがあるのではないでしょうか。
 この話の六郎は、「陽の末裔」で咲久子や卯乃の故郷での幼なじみ。彼は咲久子さんを追って都会に出てきたんだけど、既にそこ頃彼女は華族の夫人でもう手が届かなかったと。時期的には桜町の夫人だった頃でしょうが。
 この話の中の横浜の雰囲気がいいね。マリコのおかーさんもフランス人とのハーフだし。
 何かよそから来たものでも何でも受け入れるという街の雰囲気がよござんす。



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