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花散里
白泉社レディースコミックス
2001.4.10初版
花散里
(Silky1999.2)
昭和3年正月。
四年前、19歳の時に、5歳上の夫・圭吾と結婚した花絵。結婚式の時点から、「本家の嫁」ということで、子供が産まれることを周囲は期待されていた。
だが子供はできない。後に嫁いだ義妹のかをるは正月だと言って、子供を抱いて里帰りしてきたというのに。
姑も実の母も、叔母達も皆口々にまだかまだかと彼女をせっつくが、夫はそれに対し、何も言わなかった。
口には出さないが苦しむ花絵の味方と言えたのは、断髪洋装の「マア姉さま」こと雑誌記者の摩耶子だけだった。
そんな時、姑とかをるの会話の中に、自分ではない他の女に、夫の子供を、と望む言葉が聞こえ、花絵はショックを受ける。かをるは彼女のことを、「愛され大事にされたが子供には恵まれなかった紫の上のようだ」と評する。姑はそれに対し、華やかな紫の上よりは、ひっそりとした花散里のようだ、と言う。
帰ってきた夫は、無理して疲れている花絵は見たくない、と言う。実は何も言わないことで気遣っているのだが、彼女にしてみれば、たった一つの居場所が崩されたようなものだった。花絵は倒れる。
彼女は病気だった。卵巣の病気で、手術で摘出することが必要だった。それはすなわち、これから先二度と子供はできない、ということだった。
圭吾は医者から子供ができないのは夫婦どちらもの問題だ、と言われ、何もしなかった自分に気付く。
入院している花絵のもとに、摩耶子が訪れ、「花ちゃんの価値って子ども産むだけじゃないでしょ」と言う。
一方姑は圭吾に、離婚をほのめかす。迷う圭吾。
彼は花絵を見舞いに行き、開き直った彼女を見て、あらためて妻が大切だと気付く。そしてお互いに話し合わなかったことが良くなかったのだ、と。
二人は退院してから、二人して家を説得しよう、と誓う。
野分
(Silky1999.10)
銀座の洋装店で婦人服部の責任者を勤める環。自由恋愛→見合いのようなもので、「れっきとした財閥系の商事会社」に勤める幸市と結婚することになる。
だが双方の母親とも、環が結婚しても仕事を辞めない、と口にすると、口々に「それはとんでもないことだ」と言う。この時代、職業婦人が結婚しても仕事を続ける、ということは、中流以上の家庭においては外聞の悪いことだったようである。
それはさておき、環は自分で縫ったウエディングドレスを着て結婚式を挙げた。しばらくは店を休むことになる。
やってくる姑の知り合い、市場で呼ばれる「奥さん」という言葉、それまで築き上げてきた自分というものが無くなりそうな気分を彼女は味わう。
そんな折り、店の方から復帰のオファーが来る。ここぞとばかりに環は復活する。と同時に、「主婦」としても完璧を目指そう、誰にも後ろ指を指されないように、とはりきる。
だが、店で本場での仕入れと視察の渡米メンバーから、「結婚しているから」という理由で外された時、さすがに彼女もショックを受ける。そして今までの過労がたたり、倒れてしまう。それに加え、彼女は妊娠していた。
目を覚ました環に、幸市は言う。姑もまだ隠居はしたくないのだし、一家に「主婦」は一人でいいのだ、自分達なりの家庭を作ろう、と。
また元気になって店に向かう環だった。
蜻蛉
(Silky2000.2)
昭和3年冬。耳隠しの「若奥様」である倫子は、気の強い姑と、名家の伝統としきたりに押しつぶされそうな毎日を送っていた。
リベラルな家庭に育ち、女子師範まで出た彼女にとって、それはまるで違いすぎる世界だったのだ。嫁はしきたりを変えることなく守っていくのが役目、新聞など読むものではない…
銀行家の夫とはもう三年連れ添っているのに、未だに身近には感じられない。子供もできない。現実とはこんなものか、とあきらめるしか彼女にはできなかった。
正月、夫の弟である「法律家の卵」の光季が大学から戻ってくる。彼だけが、倫子にとって話しやすい相手だった。書斎に幾らか本を置いていくから、好きな時に読めばいい、と彼は言って行く。
一方夫は、相変わらず彼女の意見など何も耳を貸さない男だった。週末必ず帰らない夫。倫子はつれづれに、光季からの本の中から、「蜻蛉日記」を取り出して読む。その主人公の境遇に、彼女は自分を重ねて泣く。
ところが帰ってくるはずのない夫がその時ちょうど帰ってくる。弟からの本を大事に抱きしめて泣く彼女の頬を、夫は打つ。理不尽だったが、夫の嫉妬なのか、という思いが彼女を支えた。
…そんなある日、夫が血相を変えて早いうちから戻ってくる。そこで告げられたのは、外の女に子供ができた、という知らせだった。週末居なかったのは、その女に与えた家に通っていたからだった。
子供は引き取って倫子の子として育てる、という姑に、「私には育てられません/その方が育てるべきです!」とついに口にする。
聞いていた光季は彼女に法律的なアドバイスを幾つか教えた上で、こうたずねる。「あなたはどうしたいんですか?」
倫子は美容院に行って、耳隠しだった髪を切る。家を出るつもりだった。悲しみに埋もれて、蜻蛉の日記をつづらないために。
螢
(Silky2000.10)
上流社会…
橘夫人の泉子は、いつも一人で「自由」な貴婦人だった。金融不安の世の中、銀行家の夫は、パーティーになぞついてきてくれない。美人で社交的な彼女は、一人で社交界をかきまわす。
たとえば、当代の貴公子、東条寺公爵の次男坊とか。
戻った泉子に夫・貞見は「和泉式部を妻に持った気分だ」と言う。疲れている、と彼女は一人で眠る。そしてずっとずっと思っている相手の夢を見ようと。
「自由」な貴婦人と言っても、自由にならないものはあるのだ。
従兄の昌司。ずっと彼女が思い続けている「兄さま」。彼が結婚した後でも、自分が結婚した後でも、ずっと彼女は。
ある日、妻・秋子がバザーを開くと昌司は泉子を誘いに来る。自分の大量の服をみつくろって、彼女は夫を伴って昌司の家に出向く。台所に立つ秋子に泉子は一瞬殺意を抱く。
だが昌司は言う。貞見はいい夫だから、「世紀の恋」などに浮かれるのではない。自分と泉子は良く似ている。自分が気に入ったから、貞見との結婚に賛成したのだ、と。
判っているのだ、と。この思いは決して叶わない。口に出してはいけない。
…次のパーティーに彼女をエスコートしたのは、夫の貞見だった。
夢見る海市
(Silky1989.2)
横浜。「ゴドー開発」に勤める楡薔子は、宅地・住宅の販売から、新セクションへと異勤を命じられる。
それは10年前から買収していた土地をついに利用するプロジェクト「サウス・ベイ・シティ」だった。
会議が終わり、受付の前を通る薔子に声を掛けたのは、梧桐社長の弟・櫂だった。彼は薔子と同じ大学のサークル後輩だった。
朝早く出社する薔子。そこには既に梧桐が来ていた。彼は「サウス・ベイ・シティ」のミニチュア模型を眺めて「夢の都市だ」と言う。それを見ながら、薔子は「それがあなたの夢ですか」と内心つぶやく。
開発地域の海辺で薔子と櫂は、都市の話をする。櫂は兄の見る夢の都市はもう古いのだ、と言う。古いSFの発想だ、と。今の作家は夢は見ない、と。
そして薔子はその地域で何やら動き回る。
やがて、土地の買収がはかどらなくなり、住民反対運動が起こる。古くからの住民の結束は固く、十年程前に詐欺同然に土地を手放し心中した夫婦が居たということが、象徴のように語られているという。そしてそれが新聞社にかぎつかれ、梧桐の位置が危うくなる。
そして彼は知る。薔子が実は、その心中した夫婦の娘であることを。
彼女は自分の故郷が荒らされそうになったら動こう、としていたのだ。そして「櫂に近づいたのも」そのためか、と彼は問いつめる。そこへ櫂が入ってくる。「(彼女の境遇と目的を)知ってたからしょーこさんを好きになったの」と。独占欲で自分を縛り付けようとする兄は「敵」だ、キライなんだ、と。だから彼女に忠告しておいたのだ、と。自分のものと思ったら関心を持って、古傷をえぐられることがある、と。
だけど薔子は梧桐に惹かれていた。
櫂は「なぐさめてやって」とにっこり笑って二人のもとを立ち去り、薔子はこの先も全ての計画を泡にする、といいながら彼をなぐさめるのだった。
私的考察
花散里
今でも存在する女性の問題、をもっとそれが厳しい時代に置いたのが、先3本。
…まあ、ワタシは子供が欲しいと思うことが全く無いひとなのでコメントができにくいですが。(養子をもらおう、という最後の提案には賛成ですねー)
蜻蛉
で、こっちは結婚した女性の社会進出、という話です。後方支援が無いと、やっぱりそれは難しいですね。きっと。今の世の中だと、姑さんが支援するという形よりは、ダンナがどう補ってくか、の方でしょうね。
そーいえば、同人友達というのは、だいたいダンナがよくできたひとなんだよなー…
螢
つまりは「どうにもならないふわふわした恋をいつまでも後生大事に抱え込んでいるより、現実に自分を愛して大事にしてくれる人をちゃんと見つめたほうが幸せになれるよ」という話と思うのですが。
ただすごくあらすじとしてはかきにくいです(笑)。
たとえば「螢」が、彼女の「行き場のない恋心」として、それが酒を購入して帰ってきたダンナにぷいっと当たって〜というのが象徴しているとは思うんだけど、「あらすじ」だとそこにすごく説明が必要になる。しかもそれは解釈に過ぎないので、これこれこうだ、と言い切ってしまうこともできない。
解釈は自由、とも言えるしね。
夢見る海市
バブル期を反映してか〜80年代の話には、土地がどーの、系の話が多かったのね…
確かにこの時代なんだわ、MM21とかさ。
個人的には、櫂くんが好きです(笑)。この綺麗さといい根性(笑)。