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湾岸シティ・コネクション
1話から5話までが主婦と生活社のI(アイ)に掲載。6話、7話、8話(前後編)がスコラのSakuraに掲載。
Lady's Comic Himeの平成3年1月17日増刊号にて総集編発行。
…こんだけまとまっていて裏がありそうでキャラが面白い作品が単行本になっていないのは惜しすぎ。
……という状況で苦節?年、ようやく平成14年11月にメディアファクトリーから文庫で出版されました(^_^)v


<登場人物>(掲載誌における作者の解説による)

*杜 水葱(もり なぎ)
 1963年4月生。
 好きな季節…四季全部
 好きな花…カラー
 好きな色…赤、黒
 好きな食べ物…寿司・スペイン料理
「作者の願望(煩悩ともいう)を一身に背負って現れた主人公である。うらやましい。
 なによりも、通常、恋愛ものの重要なファクターに使われる年齢差というものを、いっさい誰も気にしていない彼女たちの世界は、気持ちいいと思う。」

*御荘 直方(みしょう なおかた)
 1970年11月生。
 好きな季節…冬
 好きな花…月下美人(…)
 好きな色…白、黒
 好きな食べ物…和食、“ベイサイド”のサンドイッチ
「結婚相手としては二重マル。豪邸、社交界、超高級車、世界の一流品、経済界のVIP夫人の座があなたに約束されるでしょう。
 愛さえ期待しなければ―――なんて但し書きは付きません。彼には愛は至上なんです。どういう表現の愛だかは知りませんが。
 あなたを裏切ることも、絶対無いでしょう。
 裏切りたくなるのは、あなたです。
 その結果、あなたに、一生癒えることのない傷を抱えて落ち込んだ人生を送らせるという、悪魔のようなやつなんですね、こいつは。
 水葱さんの相手役第1人者のはずなわりにいまいち人気の盛り上がらないやつ。
 不徳の致すところかもしれない。」

*海門 雄樹(かいもん ゆうき)
 1971年8月生。
 好きな季節…夏
 好きな花…ひまわり
 好きな色…青、黄色
 好きな食べ物…カレーライス、“ベイサイド”のサンドイッチ
「弟的ボーイフレンドにおすすめです。
 ひたすらあなたを守ってくれて、頼もしくも、かあいい、ついでにハラハラさせてくれる、忘れ得ぬ青春の日の思い出をあなたに捧げる男の子となるでしょう。
 ひと昔前だったら主人公だったタイプの健康優良不良少年。
 明朗元気の味付けみたいに出てきたんだが、望外の人気に作者も驚く。
 その定められた運命に抗議の声も聞かれたという幸せな(?)やつ。」

*月法師 漣(つきほうし れん)
 1971年5月生。
 好きな季節…春
 好きな花…ばら(食えるやつ)
 好きな色…金色、緑
 好きな食べ物…好きでない食べ物などないっ
「結婚相手には不向きですね、こんなわけわかんないの。
 恋人としても不愉快かもしれません。自分より綺麗な男なんて。
 明日をも知れぬ不安定な愛人としては、極上の掘り出し物と申せましょう。(“不”ばっかつくやつだな)
 思うままにならぬ、わか非情の運命を嘆く、悲劇の女を気取るチャンスを与えてくれます。
 当初は、おみそのお飾り的存在ではあったが、意外というか当然というか、すくなからぬひいきの圧力で、ほとんど主人公にまてのしあがった。
 その頃、長髪の美形といえば、クールビューティか、心身ともに優雅な青年とかが通り相場だった時代に背いて育ったやつである。」




湾岸シティ・コネクション(I(アイ)1988年5月号)

 横浜。山手の丘のはずれに近い男子校・私立海星学園高校の「正門の斜め前のあの小さくて古いサンドイッチハウス」の「ベイサイド」に新しい店長が来た。それも美人で若い。彼女の名は杜 水葱。学園の少年達はさっそく彼女を見に出かける。その中に生徒会長の御荘直方と、海門雄樹が居た。ちょうどその時、やくざの客が彼女に絡むのだが、威勢の良い彼女は「さわんないでよ!」と反撃。そこへ二人は助っ人する。這々の体で逃げていくやくざ者を踏みつけて入ってきたのが月法師漣。女の子に追いかけられて逃げてきた彼はどこか浮世離れしている。
 翌日はやくざのかわりに店に車が飛び込んでくる。店には別状はなかったが、そばの木がやられてしまう。地上げ屋騒ぎである。
 「ベイサイド」の土地を買いたいという強引な申し込みがかかっていた。前店主である水葱の祖母は、あぶなっかしいから、と東京の親元から彼女を呼び戻したのだった。「この子はつよいからね」
 彼らの居るこの付近は、建設ラッシュの横浜においても「最後の“金を産むアヒル”」だと御荘は言う。彼は横浜ではトップの御荘グループの跡取り息子だった。しかも海外留学して1年だふらせていた。
 そんな物騒な日々の中、水葱が夜、男に襲われかかる。それを助けたのは漣だった。彼は女性をレイプしようとする輩には容赦が無い。彼が立ち去った後、御荘が現れる。その彼に水葱は誘われ、校門の前でキスする。しかしそれ以上、をしようとしたところにその現場を見ていた者が居たことで、そこでストップする。
 しかし翌日、そのことが学校で噂になる。
 御荘は理事長室に呼ばれ、噂を肯定する。そこへ水葱は二人とともに乗り込む。御荘の父、学園の理事長・御荘直介の前に。
 しかしひるむ水葱さんではない。彼女はかつてお金で追われた初代校長の娘だった。そして祖母はその母親。彼女は理事長が学校をやめて土地転がしをしたいのだ、ということを指摘する。そしてマスコミも巻き込もうとした騒ぎは、その父親の計画を阻止しようとした息子の計画であることも。秘書長をまるめこんでいた御荘直方は、父親を失脚させることに成功したのだった。


過激なマドンナ あぶないボーイズ(I(アイ)1988年8月号)

 夏・7月の昼下がりの本牧通り。
 海門の家である洋食屋で皆で食事をしていた例の四人。遅れてやってきた漣を、突然車が襲ってきた。更に帰り、山手の同方向に帰る水葱と漣を、何故か崖の上から落ちてきた巨石が襲う。
 更にその翌日にはプールで漣は突き落とされる。更に更にその帰り、今度は車で誘拐されそうになる。不審に思った御荘は、秘書長に漣とその実家のあたりを調べさせる。
 もと邸宅だったマンションに引っ込むことにした漣の所に水葱は遊びに行く。その時彼女は長く伸ばした漣のその髪の下、首の後ろ側に大きな古い傷跡があるのを知る。
 しかしそのマンションにまで、追っ手がやってくる。逃げ出そうとする彼らに、先日誘拐しようとした車が現れる。どうやらそちらは彼を保護しようとした団体のようだった。
 「どっちにしてもおれは嫌いなのっ」という漣は、鎌倉の実家へと乗り込む。
 漣の実家・月法師家は、鎌倉にある門跡・月光院の門主の家柄だった。この月光院は、全国に門徒が広がっていて、表には現れないが影響力が大きい、という門跡だった。そしてその月法師家において、門主は象徴的存在であり、代々直系で男女を問わない。現門主は漣の伯父であるが、重い病の床についている。その門主には実子が無い。養子は居るのだが、血の濃さで言えば、門主の妹姫である漣の母親が一番だった。しかし「そう母上は…使えない」。で、次が漣だった。しかし漣は月法師家ではないものとしてきた子だった。そうなると、現門主の夫人は、養子となっている連れ子の息子を当主に据えるため、手段を選ばなくなってきたという訳だった。
 しかし実際に行動を起こしたのは、月法師の名と力を利用したがっている男、御荘直介だった。
 そこで御荘(直方)は、ハマの暴走族のボスでもある海門に、現在逃走中の水葱と漣を見つけるように頼む。海門は自分の部下に手分けをさせる。そして何とか、ちょうど襲われかけている二人と接触。二人は月法師の家へと入り込む。
 入り込んだ漣は、母親の部屋の扉をこじ開ける。しかしそこに居たのは、認めたくない息子の姿に心を乱され叫ぶ母親の姿だった。かつて寺に居着いた小者が、若い美しい妹姫に恋し、レイプする。妹姫は息子を産んだ。それが漣だった。
 漣は家人達全員に「おれはぜーったい跡取りなんかにはならないからな!」と断言する。彼はずっと、5歳の時に自分を盗み出し、全国を旅して歩いた父親と暮らしていたかったのだ。その父親は、追っ手を受けて、自分の喉をついて死んだ。取りすがる漣の首筋に、過ちの傷を残して。
 母親は、それ以来心を現世から捨てていたのだ。
 二人は御荘の車で引き上げていく。


本牧伝説(I(アイ)1988年12月号)

 とある日。「ベイサイド」は漣目当ての女子校少女達があふれて騒がしかった。「やかましい!」と一喝する水葱に、その中の一人の少女・杏奈が言い返す。しかし店主は強い。結局漣がにっこりと「ばいばい」。とりあえず一件落着…かと、思ったのだが。
 さてその一方、海門はここのところのハマのグループのバランスの崩れを懸念していた。こぜりあいのシマ争いや吸収解散。そのくせ細かい情報が入ってこない。「伝説の大抗争」のあと10年、穏やかなバランスを保っていた本牧に、何かが起ころうとしていた。
 そしてある日、海門が自分の部下を痛めつけた奴を捕らえて「ベイサイド」にやってくる。捕らえた男は、「本牧中心にハマのグループを根こそぎ刈って、ひとつにまとめて手足みたく使えるように」するために今度のために組織されたのだ、と言う。そしてその男は、自分の上が「マリアが帰ってきた」と言っていた、と。
 本牧のマリア伝説。10年くらい昔、暴走族や番たちや、カタギのミュージシャン、みんなが大事にしていた混血の美しいマリアの話だった。アメリカ兵にも愛されていたというマリアは、ハマ最強の凶悪軍団礼紋のギループを壊滅させて消えたのだ、と。
 「長い髪の少女。大きな瞳の黒い。そして男まさりの腕と技。勢力争いに明け暮れていたハマを愛するあまり、本当の恋人 礼紋をその手で刺したマリア―――! 取り戻した静けさに背を向けて、港から行ってしまった赤い靴のマリア」
 …だがその話に水葱は大爆笑する。
 そしてその後、その彼らに、漣をあずかっている、という誘い出しが入る。御荘は海門に、自分だったらハマのストリート・キッズをまとめあげれば、素晴らしく役に立てて見せる、と言う。その言葉で海門は今回の事件の意味を理解した。
 三人は呼び出された場所に出向く。呼び出したのは女だった。マリアという。―――水葱の昔の知り合いだった。
 つまりは、ハーフのマリアと黒い瞳に長い髪の本牧のアイドルの少女の水葱が10年の間に伝説でごちゃ混ぜになっていたのだ。マリアの恋人だった礼紋は、水葱に心を移して、マリアは彼を傷つけ、アメリカへ、礼紋は沖縄へ、そして水葱はハマを鎮めて東京へ出ていったのだ、と。
 そのマリアに伝説を利用させ、動かしていたのはやはり御荘直介だった。直方は手を回し、秘書から手切れ金を預かってくる。
 海門「おまえが脅して出させたんだろ」
 御荘「ひとぎきの悪い…」
 とりあえず事件は落着したが、水葱は真相は忘れろ、と皆に言う。伝説は訂正するものではない、と。


ダークサイド・セレナーデ(I(アイ)1989年3月号)

 あの三人が大学生になる! …しかし目と鼻の先、海星学園大学へ。
 三人を見送る水葱の前に、一人の美少女が現れる。ふわふわの長い髪、印象的な大きい眼、色白でほとよいプロポーション。海門によると、それは御荘のフィアンセで、クラリス女学院に通う瓜生桜子だ、という。家柄のいいお嬢様。御荘の父親はたった一つ持っていないもの―――旧華族とかの高貴な血とか誇りを欲しがっているらしい。苦労時代に一緒になった地味な夫人を鬱陶しがって山手育ちで大学出の明るい美人秘書を表向きのパートナーにしているということだった。
 御荘直方にはは瓜生桜子と同じ学校・同学年の妹と、留学中の弟・直彦が居る。しかしどうやら、父親は自分ではなく、この弟に跡を継がせたがっているようだった。
 父親・直介氏はあくまで自分がトップでありつづけたい、という人物だった。後継者も、単に自分が引退する時に、自分の作り上げた者が控えている気休めとしてしか見ていない。それ故に、自分を凌駕しようとする優秀な息子・直方は、追い落とす男に過ぎなかった。
 理事長としての直方は隙を見せない。理事達の中でも向こうの息がかかっているだろう者を早々に見つけだす。
 そんな折り、瓜生桜子が、海門のグループの前に姿を現す。関わりたくはない、と思った彼らはとっとと散会しようとするが、それを桜子が押しとどめる。そして自分で手を握ったくせに、悲鳴を上げる。そこへ漣が現れるが、ボスに誓って下手なことはしようとしていない、と誓う部下を彼し信用し、解放する。
 桜子は漣に送っていって欲しい、と頼む。しかし漣はつれない。そして彼女がどうも、自分なりグループなりをお嬢さんなりに誘っていたのだ、ということを見抜く。逃げる桜子。何とか彼女を捕まえて、「ベイサイド」へ飛び込むと、そこでは御荘と水葱が今にもコトを始めるとこだった。
 泣きながら桜子は白状する。御荘直介から、海星学園の不祥事が欲しいと言われた、と。直方をずっと好きで思い詰めていた彼女は、自分を見ない彼に、無視されるくらいだったら憎まれたかったから自分から行動を起こしたのだ、と言う。直方は「憎むほどのものじゃない。哀れんでいます」という。彼女は「それでもいい」と涙する。
 秘書嬢のマンションに直方は「資料」と称して、某理事の取り忘れた備品台帳のコピーと、解職通知、コピー代の請求書に加え、「傷心のクラリス生徒わはげます海星高生とベイサイドのオーナー」と書かれたポラロイドをまとめて渡す。例の三人+水葱が桜子と一緒に写っている写真だった。
 少女は水葱に、まだ夢は消さない、と言う。


花の色 移ろふ蔭(I(アイ)1989年7月号)

 大学に入った三人。皆それぞれの特性でいきなり学内でも台頭していた。
 そんなある日、水葱は道ばたでなかなか綺麗な男にナンパされる。
 さてある日漣が、法事に実家に帰るという。病床だった伯父が亡くなったのだという。それ自体は鬱陶しいが肉親だし、という漣に、御荘は「口直し」とばかりに葉山の別荘でそのあと遊ぶことを提案する。そして水葱をもそれに誘う。
 月法師家では、門主となった養子の孝行氏はまだ漣に脅威を感じていた。問題なのは血なのだ、とその姿なのだ、と。したがって彼を来させてはいけない。大葬儀に彼が列席しいてはならない…と。孝行氏は既に手を打ってある、と母親に告げる。
 お出かけのために買い出しに出ていた水葱。そこに先日のナンパ男を見つける。だがどうもそれは、更に前方を行く漣をつけているようなのだ。
 朱雀というその男は、どうやら漣と同じく月光院へ向かう途中だった。その彼に、声をかけられた漣は何処かで会ったような感しを覚える。その二人に、何者かが襲いかかる。漣も応戦するが、倒される。そこへ心配した水葱がちょうど現れたため、彼らは漣を置いて逃げる。
 ひっくり返っている漣は水葱にキスするが殴られる。どうもそれは受け身だったらしい。
 山を回って逗子に回避しようとする二人。その前に、孝行氏を連れた朱雀が現れる。孝行氏によると、朱雀は流れ者の刺客らしい。そして彼は、月法師家自体に恨みを持っていたのだ。
 広げるナイフ。漣の中で記憶がよみがえる。その姿は父に似ている。朱雀は父の弟だったのだ。その時から漣はずっと人の顔を覚えておくのはやめておいたのだ、と。連れ出した漣と旅するために自分を捨てた兄。だからその元凶である漣も憎い。
 しかしナイフを振りかざす朱雀に漣が組み合った時に、朱雀はその首すじの傷を見てしまう。水葱は言う。「これ以上漣を傷つけようなんて、このブラコン! 絶対許さない!」
 御荘と海門が電話を受けて、タイミングよくやってきたので、朱雀はそこから逃げ出す。
 誰よりも漣は父親を愛していた。だからそれを衝撃的に失ってからは、彼は誰にも終着しなくなってしまったのだ。水葱に言わせれば、御荘は計算づくの冷徹さだけど、漣は心底酷薄な人間になりきっている。そして自分たちと友達をやっているのは、自分たちが漣を愛して、また彼がそれを知っているからだ、と。


薔薇の標的(Sakura1989年10月号)

 さて水葱さんがやってきて一年半になっていた9月のある朝、店をあけた途端、みごとなばらの花束が置かれていた。
 相変わらず現役海星高生がたまる「ベイサイド」。しかし「じつは高校の若き理事長」御荘と「全運動部に君臨するOB」海門には勝てない。薔薇を口にしては「うすあじだ」などと言ってしまう漣と三人、水葱を取り巻いて和やかな日々が続いている。
 だがしかし、またもや「ベイサイド」に危機が迫っていた。今度は御荘グループではなく、南からのしてきた新興のレストランチェーンだという。
 そんなある日、幹部会のために本牧の空き地にやってきた海門は、「おとな」に痛めつけられた部下達の姿を見る。そこに現れた男は、非情に強かった。そして例のレストランのちらしを落としていく。
 そのレストランは、どうやら沖縄から伸びてきたらしかった。それを知った御荘は、目的は場所ではなく、水葱ではないか、と推測する。社長の名が問題だ、と。それは礼紋だった。10年前の不良少年達のボスだった…
 彼は水葱の店にやってくる。薔薇を送ったのは彼だった。彼が去ったあと一瞬思い出にひたる水葱。何せ彼女の最初の男だったのだ。友達の恋人で、敵だったけれど。しかしその直後に怒りが勝った。
 夜の公園通りで彼と会う水葱。彼女ははっきりと立ち退き/自分を欲しいという申し込みが「NO」と言う。
 翌朝、礼紋が「ベイサイド」に乗り込んで来る。ちょうどそこには、漣が来ていて、海門も現れる。海門は先日の敗者復活戦、とばかりに礼紋と殴り合いを始める。水葱に気を取られた礼紋は海門の一撃を受ける。彼は御荘が本牧の土地を横取りしたのだ、と言いに来たのだった。続けてやってきた御荘は、父をたきつけたのだ、という。
 御荘は言う。「だって―――あなたは邪魔です。ぼくたちにとって。水葱さんの傍に、ハマに―――いらない。ここはぼくたちのものです」
 荒らされた店内。今日は休みだ、と水葱は皆を帰す。暴れた海門をのぞいて。海門は彼女に聞く。まだ好きなのか、と。彼女は好きだった、と答える。だけど思い出以上にはならない、と。
 そして今は? と問いかける海門。水葱は言う。
「わたしの頭と体はね、御荘を好きなの。惚れてるわね。でも、気持ちというやつがね、気づくと漣を見てる。ときめくの。魅せられてるのね」
 そして自分に関しては「全部好き。美内みたいよ」と抱きつかれる。彼は「幸せだけど不幸だ」と思うしかなかった。


黄金の四人(Sakura1990年1月号)

 夜景を見に行く水葱と御荘。しかし話は、御荘の父親が新しく建てたヨコハマ・ベイ・ホテルの話から、開発の話へと移る。水葱はせっかくの緑の空間をこれ以上開発で奪わないで、と怒る。
 その御荘は、朱雀と連絡を付ける。彼はずっとそのまま横須賀に居た。漣に対する逆恨みはともかく、彼はまだ月光院勢力には憎しみを抱いていた。
 さてその漣だが。相変わらず水葱と買い物に出たりのほほんな日々を送っていた。しかしその帰り、家の前で待っていた御荘に会う。話があるのだ、と。大晦日のヨコハマ・ベイ・ホテルの落成記念に一緒に出てほしい、と頼む。何かしらの画策があることは漣も感じ取る。自分がことを起こす時に、彼に居てほしいのだ、と。
 そしてそのイベントのことを海門から聞いた水葱は、そのパーティに入り込もうと海門に持ちかける。
 パーティで、御荘直介氏は、月光院の新門主、孝行氏を紹介する。それは月光院勢力が自分と組んでいる、という権力の誇示だった。
 ただ、その会場には、直方の秘書と名乗った朱雀が入り込んでいた。彼は二人に向かい、先日の「ほんものの跡継ぎの坊やをちょいと片付けてくれと頼まれたあれ」の報酬をもらっていない、と詰め寄る。
 そこへ御荘と漣、別口で堂々と(招待状も無いままに)入り込んだ水葱と海門が現れる。連れ出されようとする朱雀と、漣ははち合わせする。朱雀は立ち去り際、漣が月法師の「ただ一人の血筋」だと言い捨てて行く。一度出された言葉は消えない。
 漣はその意味を察し、全てに背を向ける。水葱は直方を一発殴る。彼は言う。「―――そうぼくは、地球を測り売りして生きる種類の人間になるでしょう」と。


永遠の蒼(Sakura1990年7月号、8月号)

 三人は既に一緒に「ベイサイド」に来ることはなくなっていた。一度壊れた御荘と漣の仲は修復しない。
 その海門は、本気でレストランの修行をしたいから、と大学をやめることをほのめかす。「もう少しつるんでいたかったから」でもそれはもうかなわない。
 その後にやってきた御荘は、最近不動産会社も作ったのだという。再開発地区を一手に引き受けたいのだ、と。そのわがままを通したいのだ、と。
 そして社会的に一人前として認められなくてはならない立場のために「結婚してください」と彼は水葱に言う。
 水葱は魂胆を訊ねる。御荘は言う。「ほくはあなたを敵にまわしたくない。他の誰のものにもしたくない。完全に征服したい。ぼくの手にはいらないくらいならいっそ壊してしまおう。こういうのも愛といいませんか―――?」そして水葱は、それは脅迫というのだ、と返す。彼女は答えを出さない。NOと言わなかったのは、彼女が御荘に惚れているからだが、YESとも言わなかったのは、彼女は彼の隣で人生を歩む気はなかったからだった。
 一方漣は、月法師の門主として、実家に戻っていた。居心地のいい場所にもう戻れない。だから仕方なく彼はそこに居た。御荘は誰よりも彼を甘やかしてくれた。なのにその御荘が、彼を野望の渦の中に追い立てた。それを漣は許せない。
 その御荘が、開発計画について、月法師家に協力を要請してくる。門主に友情を期待する、と付け足して。
 漣との友情に助言する海門。彼は海星をやめることも御荘に告げる。彼はグループの解散式の後だった。御荘は開発地区の検分の途中だった。
 その御荘をトラックが狙う。そしてそれをかばった海門のバイクは宙に舞った。まだ二十歳の青年の命はそこで停止した。
 海門の死は御荘にかなりの打撃を与えた。触れれば切れそうな程に。彼は海門の家に顔を出したあとの水葱に出会う。そして言う。自分も漣ももう泥沼の中だけど、彼だけは光の中に置いておきたかった、と。水葱は取り乱す彼を見て、正気に戻れと一発殴る。そして安心する。
 水葱はこの事件が御荘を狙ったものだった、ということを聞き、その犯人探しをする様に彼に言う。二人の話を聞いていた海門の仲間達も、その捜索に進んで協力する。彼らは彼らで、本牧一の走りの自分たちのボスがひき逃げされた事実が許せないのだ。
 一方「友人の葬式」に漣は出ようとする。そこへ水葱がやってくる。漣は全部御荘の野心のせいだ、と自分の手で御荘の首をしめてやりたい、と言う。自分で勝手に憔悴などさせない、と。
 それを聞いて水葱は言う。「あんたたちの愛は恐いわね」「もっともあんたがそれほど御荘に燃え上がってるって知ったらあいつは死ぬほど喜ぶわよ」
 そんな時に、月光院の姫君―――漣の母親が正気に戻った、という知らせが入る。駆けつける漣。しかしそこには彼が期待した視線はなかった。彼女にとって既に漣は記憶にある赤ん坊ではなく、許せない忘れない男の方に似ていたのだ。向こうも愛する努力をするべきだ、と言う水葱に漣は泣きながら言う。「努力する愛なんておれはいらねえよ」と。
 そして水葱は葬式に出ようとする漣に提案する。「わたしがあんたの“力”を利用する」と。
 通夜の場に、ひき逃げの車を見つけた海門の部下の少年・ヒロシが現れる。水葱は彼に色々指示を加える。
 そして葬式の場、「月光院門跡 月法師漣門主」として漣が現れる。そしてその場で、漣は再開発地区は「純然たる公共事業」として、「特に厳しい監視のもとに」開発されることとなった、と断言する。どこも勝手なもうけ仕事はできない、と。それが御荘であっても、と。そしてその場にやってきた部下の少年により、旧御荘グループの本社に警察が入ったことが知らされる。
 葬式の後、漣は門主の衣を脱ぎ去り、「もう着ない」とお守り役(秘書か?)の茨木に言い放つ。もう母は象徴の門主などこなせるだろう、と。そしてヒロシからナイフを借りると、長い髪をその場で切り捨てる。「海門に」と言い捨てて。首すじがあらわになって、傷あともさらされる。すれ違う海門に、漣は言う。「おまえもいちど全部皮脱げよ」
 旧御荘グループ総帥の直介氏は、側近の逮捕後引退。同時に、御荘直方も、会社を守るため、一切の手を引いた。彼は気分転換に船でバイトしながら世界中回ってくる、と言う。漣もまた、日本中歩いてくる、と旅立つ。
 そんな二人に水葱はいつでも帰ってらっしゃい、と言う。
 「あんたたちの湾岸シティよ。わたしと海門の想いが守ってるから」



私的考察

 そーなんだよなー。このくらいの長さはやっぱり欲しいのよ。この人の作品は。
 シリーズ連作にしてこのくらいで納めると、何かしっくり来る。「幸福の眼」もそうなんだけど、一つ一つだといまいち印象が薄いのかもしれないけど、キャラクターの特性とかが時間を追うごとに増していくから、いい感じになっていくというか。
 「踊る惑星」なんて、このくらいの回数の連作シリーズとなったらもう少しピントが合うと思うんだが…あの天文台の先生とかもちゃんとキャラも台詞もたっぷり立つだろうに!
 で、この作品の場合。
 何と言っても舞台よね。横浜―――本牧、山手。鎌倉。何はともあれ「ハマ」というのはやっぱり魅力的な場所なのだ! 横浜ってのは、唯一日本中で東京から一目おかれているおしゃれな街、と聞いたことがあるけど、何かもう、「伝統的に」格好いい感じの場所ではあるんだよなー。何故か不良の抗争とか「伝説」が似合ってしまうというか(笑)。今はどうなんだろう?
 で、このメインの四人が、皆キャラ立ってるんだよね。(いやその都度の脇役も立ってるけど(笑))漣は確実に九門京也の路線だな(笑)。絶対市川さん、このタイプ好きだろな。頼朝も若い頃もこのタイプだ(笑)。御荘もなかなかの人物だが、やっぱりまだ甘かったな(笑)。海門は…うるうる…何故だ〜
 しかし今これあらすじ書いてみて思ったけど、長さ的には「陽の末裔」どころではない短さなのに、何がどうしてこう込み入ってるのか、と思ったんだけどさ、結局心情が複雑なんだよな。あれより。「陽の末裔」は何だかんだ言って、心情よりもお話優先だから、あらすじを追う時には、ものごとを並べていけばいい。しかしこういう作品の場合は、ちとそういう訳にはいかない。難しいものだ。
 いずれにせよ、よーやくこの欄を作ることができて嬉しいです。はい。



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