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「幕末洋食事情」シリーズ
集英社YOUコミックス
2000.12.20初版
慶応三年のフルコース
(YOU1997.12)
慶応三年(1867年)横濱村。
めし屋の「元町亭」の娘りせは、見よう見まねながらも洋食を作り、客に出して好評をもらっていた。
そんな折に、外国奉行所の役人がやってくる。堀 大佑と名乗る侍は、将軍慶喜公が和親条約を結んだ国々の公使を招いた宴を開くのだ、と告げる。その時の料理人として、りせの父親である竜造の腕が欲しかったのだという。
しかし父・竜造は既に亡い。りせは自分がその役をしたい、と申し出るが「女は駄目だ」とはねつけられる。そして彼女は新作「鶏のカリー」を男の格好で出す。「今から男だ」と。料理人・竜としてりせは江戸に出る。
江戸ではフランス人シェフのジャン・モリエールが彼女に料理を教える。その間、堀は何かとその料理場に現れる。
ある日買い出しに出た時、彼女とジャンは勤王浪士に襲われる。新撰組・沖田に助けられた二人。しかしその時彼女をかばった折に、ジャンは「竜」が女であることに気付く。そして堀がそれを見張っていたことにも。
宴は成功。堀は彼女に「帰る前に京友禅の振り袖を選びに行こう」と誘う。…その後ろでジャンが「ドレスおくったる」と奮起しているが…
オランダ五番館の料理人
(YOU1997.18)
万延元年(1860年)の横濱。
医者の伊織さんの妻となったまさのさん。嫁ぎ先は代々の医者。皆が皆良くしてくれて、武家育ちのわりにはぽあんとした彼女は、幸せな毎日。…ただ一つの気がかりをのぞいて。
その気がかりというのが、夫である伊織さんだった。何かと外国人居留地に出向く彼の身体からは何やらふあんと甘い香り。
滅多にない心配ごとに頭がぐるぐるとしてしまった彼女は、とうとうある日、居留地に出かける。
慣れない場所で、彼女は馬車にびっくりして転んでしまい、たまたま通りかかった医者・山村アレクサンダー一郎太に手当される。ところが彼は、伊織さんを知っていた。
アレクは彼女を連れて、夫が居るというオランダ五番の横濱ホテルへ連れていく。そこで何やら騒動が起きていたので、思わず彼女は懐剣を持ち出して「助太刀!」と飛び込む。だがそこで掟いたのは、何と牛の解体だった。実は伊織さんは西洋料理のコックになりたかったのだった。
初めて聞く夫の夢に彼女は感動し、自分も西洋料理を習う、と言い出す。
台所に入るようになり、だんだんと家庭に西洋料理を取り入れていくまさのさん。そんな彼女を見ながら、伊織さんはどうやら先を越されそうだ、とふと不安になってしまうのだった。
馬車道開国亭
(別冊YOU1999.10.10号)
文久2年(1862年)秋。漆器問屋和田屋の娘なをは、洋髪を結った新しもの好き。叔父の蓮十郎が亜米利加商館に入り浸り、写真師に弟子入りしている関係もあり、足繁く居留地に通っていた。
居留地では幼なじみの琢郎が、英八十六番館で料理人の見習い中だった。彼と話す中で、彼女は自分が「行き先」を探していた、ということに気付く。当たり前のように何処かの商家に嫁入りさせられる、とかではなく…
叔父のもとを訊ねると、勝海舟と、坂本龍馬がそこにはいた。彼女は彼らの会話にまた、世界の広がりを感じて嬉しくなる。そして特に坂本龍馬に惹かれる。彼に「女性の中のひとり」ではなく、「横濱のなを」として見てもらいたい、と彼女は思う。
そんな折りに、皆で横濱ホテルに食事に出かけることになる。メニューの読めない皆は、琢郎を呼びだして給仕してもらう。
初めての洋食に舌鼓を打つなを。だが客の外国人は、洋髪を結っている彼女をらしゃめんと間違える。思わず憤る坂本。まずい事態になりそうなところを助けたのは、琢郎だった。
騒動を起こしてしまったことを謝るなを。琢郎はそんな彼女に、そこが自分の仕事場であることを語る。そしてなをは、琢郎の「行き先」は西洋料理で「立つ」ことなんだ、と気付く。
そして彼女は琢郎からミートパイの作り方を教わり、坂本に出す。坂本は「横濱のなを」をきっちり印象づけて、神戸へ去っていく。
印象つけたことでさっぱりした彼女は、琢郎に「今度は自分達の番だ」と横濱で最初の日本人のレストランを開こう、ともちかけるのだった。「一緒に」それが彼女の「行き先」だと。
長崎ばんけっと
(別冊YOU2000.3.10号)
慶応元年(1865年)、長崎の小藩犬村家では三の姫の婚約がまとまった。ところが西洋趣味の藩主は、その婚礼の宴を西洋式でやりたい、と言い出したのだ!
皆驚きてんてこまい。
そして当のの姫君だが。晴姫と呼ばれている三の姫は、すぐ上の姉が嫁いですぐに母親を亡くしているので、妙に奥向きのことにあれこれと気を回す苦労性だった。
さて宴会と言えば料理。外国商館から、若い料理人・有吾が紹介された。領主は彼に、当家の台所方に西洋料理を教授してほしい、と頼む。
さて台所はてんやわんや。そこへ姫君まで入り込むからまた大変。実は姫君、彼の料理に対する姿勢に感動したのであった。
特訓が毎日続く。台所方の人々は一生懸命習いながら、時には出来映えに感動したりするのだが、そこへ何故かちょくちょく姫君が混ざり始める。
しかしさすがに普段無口な彼は、連日の仕事にやや疲れていた。そして梅につられて散歩していたら、姫君に出会う。さっぱりとした彼女の西洋髷から話がゆっくりだがはずむ。だがその中で、彼女は結婚相手が果たして自分と同じ西洋趣味を持っているのか不安になる。有吾はそんな彼女にふと言ってしまう。「おやめになったら」ずっとこの家で西洋料理に興じて…「冗談だ」と彼は言ったが。
さて台所ではとうとう中心料理に入った。鴨の詰め物である。姫君は当然のように、その料理に立ち向かう。と、その時、許婚がやってきた、という。姫君は台所へ通して、と言う。ところが、許嫁の目に入ったのは、鶏を割いて血塗れになった姿だった。
めでたく破談にぱなったが、せっかくだからと姫君は花見もかねて宴を開きましょう、と提案する。英国風に「ばんけっと」という野外パーティを。
そしてその桜の木の下、美味しい西洋料理を立ち食いしながら、姫君は有吾にずっとここにいてほしい、と頼む。どうやらこの先も奥の仕切りは彼女がするようだった。
幕末洋食の動乱
(別冊YOU2000.10.10号)
私的考察
慶応三年のフルコース
さて幕末。
期間限定だからネタ切れが大変かもなー、と思えるこのシリーズだけど。
とりあえずこれが最初なのかな?
格好さえ変えれば「男」「女」という区別が実はあまりない、というこの時代を感じるのでありました。そーいえば、和田慎二の「あさぎ色の伝説」の中にも、男の格好して吉原を仕切る女性とかあったし、JETの「花に恋して候えば」にもそういう女性はいたな。
ま、そのくらい「格好」が男女も身分もきっちりと区別していたのが江戸時代なんだろうけどさ。
沖田さんが出てくるのはご愛敬と言えましょう。
オランダ五番館の料理人
で、これはまたお得意の「ぽあん」とした女性が出てくる話。
牛肉を食べることの葛藤って…あまりなかったのかなー、と思いつつ。
個人的には扉絵の洋装の二人が可愛いです。
馬車道開国亭
何かあらすじ書くとみょ〜に長く感じるんですが、わりとさくさくっと行きます。でもちょっと詰め込みすぎ、があるかな?
まあ坂本龍馬はつけたし、というか「きっかけ」だろーなあ。
ここで出てきたミートパイはわりと「作れそう」な感じが。
長崎ばんけっと
舞台を横濱から長崎に移して。このシリーズもつまりは各地の「洋食事始」を書けばいいんだから、確かに長崎にもってきてもおかしくはない。この調子で「函館」とか「下田」とかもないかなー。
まあこの話はなかなか痛快でした。つーか、「ぽあん」とした姫君なのに、妙に策略もあるあたりがおかしい。結局二人してあのタイミングを見計らってたんでしょーなあ。
ま、こうゆうのほほんとした小藩は明治の世になってものほほんとした華族となって生き残っていきそうですわ。